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第41回

ひとSTORY

西村和真さん(ボーカリスト)

西村和真さん(ボーカリスト) 西村和真さん(ボーカリスト)

ジャズ、ポップス、R&B、カントリー等、様々なジャンルを歌いこなすボーカリスト。40歳を前にして、プロ活動開始。現在、東京在住ながら、九州でも精力的にライブ活動を行う。大人の魅力に満ちたボーカリスト、西村和真さんへインタビュー。

生い立ち

福岡県大川市出身。1956年9月7日生まれ。長渕剛とは生まれた年も同じ誕生日。祖父は建具屋、父は製材所を経営。三兄弟の長男で弟が二人。音楽好きの父は、アメリカのジャズ歌手ナット・キング・コールのレコードをよくかけていて、幼稚園の頃から隣で聴くことが多かった。バンドよりもソロ歌手に興味がわくのは父の影響かもしれない。歌うのが大好きで、遠足のバスで歌う順番がくるのを楽しみにしていた記憶が残っている。

大川から福岡へ

中学に入ってから、映画館で「エルビス・オン・ステージ」の予告編を見る機会があった。数分間ながら惹きつけられるままに、本編を見に行って以来のプレスリーファン。他にもアンディ・ウイリアムスやトム・ジョーンズなどの洋楽を好んで聴いた。音楽の先生の推薦で、筑後地区の中学生音楽コンクールへの出場を促され、女子生徒との二重唱で優勝。その後、大川市から福岡市へ転居した。

高校入学

西南学院高校入学。クラスメートには、白浜久(ex.ARB)もいた。同級生とバンドを組み、プレスリーやビートルズをコピー。同じ年のクリスマスには、あるデパートのレストランのパーティで演奏し、初ギャラをもらった。その後、メンバーを変え、高校の文化祭に出演。バート・バカラック、サイモン&ガーファンクル、カーペンターズなどのポップス曲を中心に演奏。ギターを弾き始めたのは18歳。フォーク喫茶「照和」にも一度だけ出演。ヤマハ主催のコンテスト(POPCON)へギター1本の弾き語りで出場。「曲は良いけど、もっと詞を勉強して。」とアドバイスをもらい、それからたくさんの詞を書いた。その後のPOPCONでは長渕剛、チャゲ、飛鳥涼らと同じ回に出場した時もある。

大学時代

福岡大学入学。サークルやクラブには所属せずに、音楽活動を続けた。'80 「POPCON」入賞。'84 「KBCライブコンテスト」優勝。華々しい結果も手にしたが、大学卒業後は父の跡を継ぐことを決断。レコーディングの機材を購入し、家で録音をしてみたり、昔の仲間と数か月おきにスタジオで音を出すことはあったが、人前で歌うことはなくなった。プロの歌手になるのは断念したが、年を取ってからでも思う存分音楽活動が出来ればと夢を描き直した。

プロ活動開始

時は流れて、会社を辞める決意をした38歳の頃、知人の紹介で結婚式で歌うブライダルシンガーの話が舞い込んだ。多い時は日に数か所の式場を掛け持ちした。数年続けている間に歌声に触れた人を介し、FUKUOKA SCHOOL OF MUSIC創立時の講師の話が届いた。教える立場になるのは初めてで、戸惑いもあったが、チャレンジすることに。教えることもだんだん面白くなっていき、20歳前後の子供たちを教えることにより、反対に教えられることは多かった。一人の学生があるフレーズが歌えなかった時なども、どうしたら歌えるようになるかを一日中集中して考え、やっと答えを発見して教えると、いつの間にか自分の方も歌が上手くなっているのに驚いた。本に載っていないことが人に教えることによって、手に入れることも出来た。18年間続けた講師生活で教え子は1500に届く人数になった。

自信

小さい頃から歌を褒めてもらう機会は多かったが、プロ活動をしていても自信満々だったわけではなく、自分がどの程度のレベルなのか知りたくなり、2003年「第22回浅草JAZZコンテスト」に応募。ポップボーカル部門でグランプリを受賞した。

上京

夢を追いたい気持ちは常にあったが、父が筋萎縮症を発症し介護を要した為、家族を優先する生活が続いた。父が他界し、しばらく経った2011年に拠点を東京へ移す。東京は刺激あるミュージシャンとも出会えるし、面白い。上京した甲斐があったと思う毎日だが、福岡へ戻るとホッとする気持ちになるのも本音。2016年には大川市の音楽親善大使にも任命された。生まれ育った大川の町に音楽で貢献出来たらと願う。

ジャンル

ジャズボーカリストと紹介されることが多いが、本当はポップス、ロック、R&B、クラシック、日本の歌など、色んなジャンルを歌うボーカリストでいたい。オリジナル曲を歌う機会はこれからも増やしていきたい。

CDについて

'03年ミニアルバムCD “Infatuation“発売。'04年オリジナルCD “COCORO“(Kazuma Nishimura名義)発売。'07 「オルゴール」「ファラオの夢」を楽曲提供し、ベトナム人歌手ヴィッキー・チャン全国デビュー。(「オルゴール」はカラオケ配信)'08 CD “Quiet Field“(Quiet Field名義)発売し、レコ発関西・南九州ツアー。'09 CD “Cross Field“(Cross Field名義)発売、全国ツアー。“Doug Ross“(Doug Ross名義)

インタビューを終えて

歌う姿は大人の魅力に満ちあふれている。そして、普段は優しさと奥ゆかしさに包まれている。結果的に少し時間はかかったかもしれないが、「歌うのが好き」という小さい頃からの想いをキープし続けるボーカリストの歌、必聴。

文:MARI OKUSU 2019.2.27掲載